ミサゴは母親が産んだ卵を破って生まれてきます。
母親が卵を産んでから、平均35日程度で孵化するようです。
産卵時期は、その地域の気温による様で、南部のフロリダ地域では3月中に カナダ等の北部では6月中になり、差が3か月にもなります 南部のフロリダ地域でその年の雛が飛べるようになったころに、やっとカナダでは産卵している感じになります
また卵を産んでからの気象環境により産卵から孵化までの期間に差が出るようです 、原因は主に気温のようですが、複数の卵を産卵した場合、経験値の高い親は卵を温める時間を調整しているようです 産卵は48時間程度の間隔で行われますので、最初の産卵から三個目の卵が散乱されるまでの間隔が4日間であるのに、経験値の高い親の場合、最初の卵の孵化から最後の卵の孵化までが2日間であったことを観察したことがあります
また、産卵から孵化までの間に雨天が多いと卵が濡れて冷たくなり孵化できない卵が多くなる傾向にあるようです。 2018年の米国の巣では、多くの巣で三羽の雛を観察てきましたが、2019年の米国の巣の多くで孵化できない卵が1~2個あり、雛が1~2羽しか観察できませんでした 2019年の米国は産卵から孵化までの間に雨天の多かった上、その期間に降雪があったりしたためではないかと考えています
また、産卵から孵化までの間に、親鳥の夫婦関係に問題が起こった事を観察したことがあります。通常産卵から孵化までの期間は、主に母鳥が卵を温め、父鳥が母鳥の餌を捕り運んでくる他、母鳥が水を飲みに行く等最低限巣を離れる必要がある時に、父鳥が卵を温めます。ところが夫婦関係に問題が起きた場合(観察したケースでは、父鳥が他の雌鳥とペアになってしまい、父鳥が巣に来る頻度が異常に少なくなっていた)母鳥は、餌を捕ったり、水を飲みに行ったり、周辺に飛来する敵対関係の鳥を追い払ったりと忙しくなって巣を開ける時間が増えてしまいます。卵がある巣にはカラスが飛来し卵をくわえて持って行ってしまったり、巣の上でくちばしで突いて卵を割って中身を食べてしまう等が起こり、孵化の時期に至る前に巣から卵がなくなってしまうこともあります
孵化したミサゴの雛は、いくつかの段階を経て大きくなります
※ この段階とは、当研究会が独自に考えたもので、一般的ではありませんのでご留意ください
① 超極小雛(micro-chick) 生まれて間もない雛
この状態の雛の頭部を含まない体のサイズは、卵よりも小さく、力も全然ありません
頭を継続的に持ち上げることが出来ませんし、自ら移動することも容易ではありません
体の色はブラウンでクリーム色の縦線が背中に入っています、歌舞伎のくまどりのような顔をしており、クチバシには、卵の殻を破るための突起がついています 羽になる部分は間接のついた小さな棒のようです
餌をもらうために一生懸命頭を持ち上げますが、フラフラしていて数十秒で力尽きてしまい、休憩が必要なようです
生まれたての雛は卵の中で栄養を蓄積しているのか、それほど多くの餌を必要としないようで、あまり食べません 見ていると、少し心配になるほどです
鳴き声がとても小さいです
糞は習性で巣の外飛ばそうと努力はしますが、飛距離が短い為、巣の中に着地します
この時期の母親は、抱卵時と同様に巣の中に座り、雛をおなかの下に隠しますので観察が難しいです
親の給餌が不十分な場合、サイズが超極小雛の状態のまま極小雛に移行するようです しかしながら、喰いっぷりが悪く、サイズがなかなか大きくなりません 実際にこのような状況になった雛の親は、巣から離れている時間が長く、雛は巣の上に放置され日中は直射日光に当たり続け、夜間は寒空にさらされ続けます
このように、雛の面倒をあまり見ない親の巣には、カラス等の肉食系の鳥が飛来して雛が捕食されてしまう確率が高いのですが、うまく生き延びたとしても末は空腹も重なりくたびれ果て、日陰や餌を求めて巣の外に出てしまい、そのまま落巣して命を落としてしまうようです
②極小雛(tiny-chick) 生まれて4~5日が経過したあとの雛です
体の色が全体的に超極小雛と比べてやや薄くなます
餌をもらうときにフラフラするものの継続的に頭を上げることができるようになっています
餌の喰いっぷりがすこぶる良くなりますが、大きくちぎった餌は拒否するようです
移動はまだ苦手な感じですが、不運にも直射日光に晒された場合には、日陰求めて頑張って移動したりします
顔つき等は、超極小雛と殆ど差がなく、一回り大きくなっただけの感じです
くちばしの先端にあった、卵の殻を破るための突起が消えてゆきます
親鳥によっては、この頃から長時間巣を離れるようになり、カラス等の肉食系の鳥が飛来して雛が捕食されてしまう事がよく起こります
この経験がある親鳥が、翌年から巣を離れる事が少なくなり、雛が捕食されにくくなった事を観察したことがあります
③小雛(small-chick) 孵化してから10日程度経過した雛です
頭部や顔が真黒くなりなり、クチバシの先端が下方向に曲がり始め顔つきが激変します
餌の喰いっぷりも更に良くなり、成長が加速しどんどん大きくなります
移動が容易になり、後期は親のおなかの下に入れないくらいのサイズになります
巣を構成している木の枝をくわえて移動させるような行為をする雛が散見されるようになります
鳴き声が大きくなり、よく鳴くようになります
糞を巣の外に飛ばすことができるようになっいます
④中雛(regular-chick)孵化してから20日程度経過した雛です
真黒かった頭部に毛が生え始め、グレーの体にはふわふわの毛が生え、羽には羽菅が生え始め羽が出来始めます
餌の喰いっぷりも更によくなり、大きくちぎられた魚も丸呑みできるようになります
羽が揃っていないため、雨に弱く、雨が降ると母親の下に潜りますが、沢山の雛がいる場合、母親の下に潜れなかった雛はびしょぬれになり、命の危険にさらされることになります
目が大きくなり、白目部分のオレンジ色がハッキリわかるようになります
この頃になると、雛は大きく食いちぎられた魚でも丸のみできるようになっていますが、運悪く魚の骨が喉に刺さってしまうケースを観察したことがあります。このような場合、刺さった骨が運よく外れない限り雛は命を落としてしまいます。
⑤大雛(large-chick)孵化してから一ヶ月以上経過した雛です
顔つきは、大人のミサゴに近くなり、クチバシの形状も大人に近くなり背中入っていた縦線が判別できなくなります
母親が巣に座らなくなります
餌の喰いっぷりがさらに良くなり、母親は大変です
雛は羽を羽ばたくようなことをし始めますが、まだたどたどしいです
⑥最終雛(final-chick)孵化してから、40日程度経過した雛です
羽が生えそろい、白い部分が鮮やかになります
顔つきは、大人のミサゴとほとんど同じになります
母親から、魚を奪い取って自ら食べるようになります
父親が運んできた魚を母親が受け取る前に雛がかすめ取ったり、母親と雛が魚の奪い合いをしたりします
羽の羽ばたきに磨きがかかり、巣の上でジャンプしながら力強く羽ばたく行為が増えます
この段階では、親鳥が巣に継続的に滞在しない場合が多く、親が滞在していたとしても、雛のサイズが大きい為、守る事が容易ではなく、ミミズクやオオワシ等、大型の肉食鳥に捕食されてしまう雛が多いのが残念です。ミミズクやオオワシに狙われた場合、雛が飛べなければ助からない可能性が大きいです
最終雛の後期に捕食者に巣が襲われた場合、雛が逃げるために、必死の初飛行を行い、雛を卒業となる場合があります
⑦幼いミサゴ(very young osprey)
一度でも飛んで巣から離れ、他の場所に止まることができた雛については、これとなります
個体差がかなりあり、10日以上差がでる場合もあります
この分類は、自由に飛んで移動できるが、自ら十分な餌を狩りで確保することができず、父親に助けてもらう必要がある段階のミサゴのためにあります
巣の雛が、全部この状態になると、母親が巣に戻ってこなくなります
父親が必要な分の魚を巣に運んできます
何らかの理由(捕食者(鷹やフクロウ等)に狙われてやすい巣の場合が主)で、雛が元気でいるにもかかわらず巣に戻らない場合、父親は、巣ではない場所にも魚を運ぶ様です
親が子育てをしている期間中に、別の巣 いわば別荘を構築することがあるようです 英語では Frustration Nests(フラストレーション・ネスト)と呼ばれています 気持ちを切り替えるための別荘とも言えますので、当会では子育て中に親が作る『別荘』としておきます
雛がこの別荘を発見して気に入り居座って、育った巣に帰らなくなるというような事もあるようです
この別荘は、気分転換の意味のほかに、捕食者からの避難の意味があるのかもしれません
また、昨年使用した巣が、別の鳥の産卵等により占領されてしまって、営巣の準備ができないような場合、この別荘がしっかりとしている場合、新しい巣となる可能性が大きいです
モンタナ州チャーローの巣は、2020年にカナダガンにより占領されてしまい、この年別荘が巣になってしまいましたが、2021年に戻る事はなく、別荘が巣になったままとなっています
⑧若いミサゴ(young osprey)
巣に全く戻らなくなったら、この状態です
自ら必要な分の餌を狩りで確保できるようになっています
筆者は、巣の定点カメラで観察しているだけですので、巣に戻らなくなった後の若いミサゴについての行動を把握できていません
一部の地域を除いて、巣の付近に滞在することはなく、越冬のために南に移動してゆくそうです
越冬地までたどり着けた若いミサゴは、翌春に北上せず、その地域に滞在するそうです
残念ながら、若いミサゴの生存率はかなり低く、越冬地にたどり着けないケースも多いそうです
翌々春まで生き延びられた場合、育った巣のある場所に行く性質があるわけではなく、どこに行くかはわからないそうです
フロリダ等の一部の地域では、越冬しないミサゴのグループがあるそうで、この場合巣立ちすると巣には戻ってきませんが、近くで生活しているようです